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This article is one part of a walkthrough detailing how we recreated an NXP i.MX 8M Mini–based computer using Quilter’s physics-driven layout automation.
ファイバーウィーブ・スキューは、特定の基板について単一の数値として予測することはできません。レジストレーション公差とガラス織布の不均一性により、配線とガラスバンドルの相対位置は製造時の偶然で決まります。したがってスキューは固定のオフセットではなく統計的な分布です。これに対して二つのモデリング手法があります。製造プロセスが生じうる比誘電率の最小値と最大値を解析的に見積もる方法と、特定のガラス織布スタイルについて所定のスキュー限界を超える確率を予測する統計的手法です。
本シリーズの前回の記事では、ファイバーウィーブ効果が差動信号伝送においてペア内スキューを引き起こし、最終的にアイダイアグラムの閉塞につながることを説明しました。第2回となる本稿では、その土台の上に立って問題の重要な側面を扱います。ファイバーウィーブ・スキュー(FWS)は本質的にランダムであり、その影響を正確にとらえるには複雑なモデリングが必要です。FWSの特性を理解するため、この現象をモデル化する二つの異なるアプローチを取り上げます。一つ目は単純な解析式で比誘電率の変動範囲を見積もる方法、二つ目は統計的なスキュー予測を可能にするモデリングの枠組みです。モデリング手法に入る前に、そもそもなぜFWSがランダムなのかを押さえておきましょう。
ファイバーウィーブ・スキューはなぜランダムなのか
配線と織布の位置関係が製造時の偶然で決まるからです。レジストレーション公差は銅パターンとその下のガラス織布との間に制御できないずれを生み、織布自体も不均一です。そのため、同一のガーバーデータと同一の積層材から製造された2枚の基板でも、スキューは異なり得ます。
FWSがランダムである主な理由は、プリント基板製造では避けられない製造ばらつきにあります。製造業者が100枚の基板に同一のガーバーデータと同じ積層材を用いたとしても、配線と織布の位置関係は基板ごとにランダムに変わります。主な要因はレジストレーション公差、すなわち銅パターンと下地のガラス織布との間に生じる小さく制御できないずれです。その結果、基板#1は高速信号のテストを問題なく通過する一方で、基板#2はFWSが大きすぎて不合格になることがあります。織布の不均一性も影響します。製織の過程でガラスバンドルは束になり、伸び、ねじれ、図1に示すような不規則な誘電体の分布を作り出します。

配線がガラス織布に対してどこに位置するかを、技術者が正確に予測したり制御したりすることはできません。そのためFWSは統計的な結果になります。ある基板のスキューがちょうどX ps/inになる、と断言することはできないのです。
FWSのモデル化には複数のアプローチがあります。最悪値のスキューに着目する手法もあれば、スキュー予測の統計的な枠組みを与える手法もあります。ここで最初に取り上げるのはBert Simonovichが提案したアプローチで、単純な式によって比誘電率(Dk)の範囲を定め、最悪値のスキューを見積もります。
Dkの変動範囲をどう定めるか:Simonovichの解析的手法
二つの極端なガラス織布スタイルを統計的な代理として用います。粗く樹脂リッチな106スタイルがDkの下限を、密でガラスリッチな7628スタイルが上限を定めます。両者の3シグマ公差を組み合わせるとDkminとDkmaxの組が得られ、差動ペアの各配線に割り当てることで最悪値のスキューをシミュレーションできます。
この手法は、差動ペアの下にあるガラス織布の形状を厳密にモデル化する代わりに、差動ペアのシミュレーションに用いるDkの最小値と最大値を見積もる簡単な式を与えます。
これらのDkの極値を求めるため、本手法は106と7628のガラス織布スタイルの誘電データを統計的な代理として使います。織りが粗く樹脂含有率の高い106スタイルはDkの下限側を、織りが密でガラス含有率の高い7628スタイルは上限側を代表します。両者を図2に示します。

注意すべきは、この二つの織布スタイルが実際の基板設計で使われるとは限らない点です。両者はあくまで、ある製造業者のプロセスが生じうるDk変動の幅を挟み込むための基準です。この二つの積層材の誘電データからDkの範囲をどう見積もるのか見ていきましょう。
材料データからのDkminとDkmaxの導出
表1は、Park Nelco社が同社のN4000-13材料系における106および7628織布スタイルについて公表している誘電率の値です。
材料(N4000-13) | 1 MHzでのDk | 1 GHzでのDk | 2.5 GHzでのDk | 10 GHzでのDk |
106(樹脂リッチ) | 3.53 | 3.29 | 3.29 | 3.25 |
7628(ガラスリッチ) | 4.10 | 3.99 | 3.90 | 3.90 |
表1:Park Nelco社の106および7628織布スタイルの誘電率。(出典:Simonovich 2011、Bert Simonovich氏の許諾による。)
各織布スタイルについて、Dkは既知の平均と標準偏差を持つ確率変数とみなせます。たとえば7628織布の平均は次式で与えられます。

基本的な統計を適用すると、この織りパターンの標準偏差は次のようになります。

106織布スタイルでは、4つのDk値から平均Dkavg_106=3.34、標準偏差𝜎106=0.13が得られます。同じ計算を7628スタイルに適用すると、Dkavg_7628=3.97、𝜎7628=0.09となります。
差動ペアのタイミングスキューは、各配線が受ける比誘電率の差から生じることを思い出してください。局所的なDkの統計的変動は106と7628の織布スタイルの極値で表されるため、主に関心があるのはこの二つの材料間のDkの差です。そこでΔDkを両者の比誘電率の差として定義します。

ΔDkの平均は、二つの織布スタイルの平均Dkの差そのものです。

ΔDkの最大値は、両織布の相対3シグマ公差(それぞれその織布の平均Dkに対する比として表す)を二乗和平方根(RSS)で合成して求めます。その結果にΔDkavgを掛け、ΔDkavgに加えると次式が得られます。

これらの値から、公差係数Tolが定まります。

Tolを対称に適用すると、局所的なDkminとDkmaxの範囲が得られます。

および

ΔDkmaxとΔDkavgの差がΔDk分布の片側3シグマの広がりを表すことから、なぜ公差係数Tolがその広がりの半分として定義されるのか疑問に思うかもしれません。理由は、ΔDkが二本の配線間のDkの差をとらえるものであり、各配線それぞれの変動ではないためです。変動を対称に配分するため、106スタイルの平均Dkを3シグマの広がりの半分だけ下げ、7628スタイルの平均を同じ量だけ上げます。
こうして明確な範囲が定まれば、設計者はEDAツール(Agilent ADSなど)の中で差動ペアの一方にDkmin、他方にDkmaxを割り当て、最悪値のタイミングスキューを求められます。
計算例:算出したDk範囲とMATLABシミュレーションの比較
この手法を紹介するホワイトペーパーには、表1のデータに基づく数値例が含まれています。ここではその例を再現し、算出された範囲をMATLABシミュレーションと比較します。表1から、関連する値は次のとおりです。

これらの値をもとに、Dkの範囲を見積もります。
解:
二つの織布スタイル間の平均Dk差は次のとおりです。

ΔDkの最大値は次のように求められます。

これは公差係数Tol=(0.72-0.63)/2≈0.05に相当し、次のDk範囲が得られます。

および

検証として、二つの織布スタイルを同じ平均と標準偏差を持つ独立な正規確率変数としてMATLABでモデル化しました。各織布スタイルについて10,000サンプルを用い、合計20,000サンプルのヒストグラムを図3に示します。

二つのピークは背後にある正規分布を反映しています。右のピークは7628スタイルのDk変動を、左のピークは106スタイルのそれをとらえています。赤い破線は解析から得られた算出Dk範囲3.29および4.02を示します。ただしシミュレーションデータはこの範囲を超えて広がっています。
上記のシミュレーションは極値の一つの実現値を与えるにすぎません。より信頼できる比較のため、シミュレーションを100回繰り返し、各試行でDkの最小値と最大値を記録しました。図4はこれらの最小値・最大値の分布を、算出した範囲とあわせて示しています。

各試行の絶対的な最小値・最大値はサンプル数や外れ値の影響を受けやすいため、図4の範囲は分位点に基づく方法で算出しました。具体的には、各試行の20,000個の合成サンプルから0.135パーセンタイルと99.865パーセンタイルを抽出しています。これらのパーセンタイルは解析的手法で用いる±3σの裾確率に対応するため、比較として概念的に整合します。
図4に見られるように、試行ごとのDk最小値のヒストグラムは算出した下限をわずかに下回り、最大値のヒストグラムは算出した上限をわずかに上回ります。つまり解析的手法はDk範囲を手計算で見積もる有用な方法である一方、シミュレーションによる範囲は式が予測するよりもやや広くなります。
この解析的手法はDkの範囲を素早く見積もれますが、Dkの極値がどれほど起こりやすいかについては何も教えてくれません。そこで本稿で扱う二つ目のアプローチ、すなわち歩留まり推定のためにFWSを解析できる手法に進みます。
ファイバーウィーブ・スキューを統計的にどう予測するか
電磁界シミュレーションで配線を織布の1周期ぶん掃引し、各オフセットにおける遅延を取り出したうえで、そのオフセットを一様分布の確率変数として扱います。得られた分布から、遅延やスキューが選んだ限界値を超える確率が求まり、織布スタイルの選択が歩留まりの推定値に変わります。
"Quantification of Delay and Skew Uncertainty due to Fiber Weave Effect in PCB Interconnects"(Manukovsky、Shlepnev、Mordooch)では、FWSを統計的に予測する手法が提案されています。このアプローチは、図5に示すように、織布を境界が明確な矩形のガラスリッチ領域と樹脂リッチ領域からなる理想化された形状としてモデル化します。

織布パターンに対する配線のオフセットを織布の1周期にわたって掃引し、各位置での遅延を電磁界シミュレーションから取り出します。このオフセットは一様分布の確率変数として扱います。図6は、4種類の織布スタイルについて配線オフセットの関数として遅延を示したものです。

見てのとおり、オフセットに対する遅延の変化は正弦波状の関数に似ています。これは周期的なガラス・樹脂パターン上を配線が掃引されることの自然な帰結です。得られた遅延対オフセット曲線から遅延偏差の統計分布を計算し、織布スタイルごとにヒストグラムとして図7に示します。

遅延偏差が最も大きくなるのは、配線がガラスバンドルの真上か樹脂リッチ領域の真上にあるときです。中間的な偏差は、実効誘電率が平均付近となるこの二つの極値の間の遷移領域で生じます。配線は遷移領域よりもガラスリッチ領域と樹脂リッチ領域の上により長く位置するため、遅延偏差のヒストグラムはU字形になります。最小値付近と最大値付近の値が最も起こりやすく、平均付近の値が最も起こりにくいのです。
これらの観察を不確かさの実用的な指標に変えるため、遅延偏差の相補累積分布関数(CCDF)を計算します。図8に示すCCDFは、遅延偏差が指定した値を超える確率を与えます。

著者らはDelay Deviation Exceedance(DDE)という指標を導入しています。これは遅延偏差が指定した限界を超える確率を表します。例として、遅延の不確かさを3 ps/インチ未満に保つ必要があるDDR設計を考えます。1080と3313の織布スタイルはこの要件を満たしません。これらの織布では3 ps/インチを超える可能性が1080でおよそ50%、3313で61%となり、量産基板で見込まれる歩留まりの実用的な目安が得られます。
同様の手順が論文内で差動信号伝送におけるペア内スキューの不確かさの評価にも適用されています。著者らは差動スキューが指定した限界を超える確率、すなわちDifferential Skew Exceedance(DSE)を計算しています。検討した織布スタイルについて得られたDSE確率を図9に示します。

たとえばDSEのデータによれば、3 ps/インチというスキュー限界を満たすのは1035スタイルのみで、この限界を超える確率は1078で約47%、1080で67%、3313で77%です。
ガラス織布スタイル | 3 ps/inでのDDE(シングルエンド) | 3 ps/inでのDSE(差動ペア) |
1035 | 0% | 0% |
1078 | 0% | 47% |
1080 | 50% | 67% |
3313 | 61% | 77% |
出典論文で検討された配線形状について、遅延偏差(DDE)またはペア内スキュー(DSE)が3 ps/インチを超える確率。出典:Manukovsky et al. 2023。
限界と実務上の留意点
どのFWSモデルにも留意すべき仮定があります。たとえば本研究では、織布はガラスリッチ領域と樹脂リッチ領域の境界が明確なものとして理想化されていますが、実際の積層材の遷移はより緩やかです。
さらに、結果は形状に依存します。配線幅や線間距離が異なれば遅延とスキューの変動も変わるため、各設計は想定する配線形状に基づいて、電磁界シミュレーションまたは測定から自前のDDE曲線・DSE曲線を導く必要があります。
もう一つの限界は、この解析がガラスバンドルと平行に走る配線しか対象としていない点です。斜めに引かれた配線は織布と異なる相互作用を示し、遅延とスキューの変動パターンも異なる可能性があります。
まとめ
FWSのモデリング手法は数多く存在し、それぞれに長所と限界があります。ここで取り上げた二つは代表例にすぎません。解析的手法はDkの範囲を素早く手計算できますが、極値の起こりやすさについては何も語りません。統計的手法はより手間がかかる一方で、前者にはできないもの、すなわち確率と、そこから導かれる歩留まりの推定値を返します。こうした手法を理解しておけば、技術者は設計空間を前もって探索し、安全な配線長の配分を決め、製造に移る前に送信側のディエンファシスや斜め配線といった対策が必要かどうかを判断できます。同じく重要なのは、FWSがある状態で見込まれる歩留まりを推定できることです。これは性能目標と製造の現実との釣り合いをとる助けになります。
関連記事
第1回:ファイバーウィーブ効果を理解する:ガラス織布から差動スキューまで
第2回:ファイバーウィーブ・スキューのモデリング(本記事)
第3回:ファイバーウィーブ・スキューの低減 — スプレッドガラスから配線角度まで(近日公開)
よくある質問
ファイバーウィーブ・スキューはなぜランダムなのですか。
配線と織布の位置関係が製造時の偶然で決まるためです。レジストレーション公差は銅パターンとその下のガラス織布との間に小さく制御できないずれを生み、さらに製織時にガラスバンドルが束になり、伸び、ねじれるため織布自体も不均一です。製造業者が同一のガーバーデータと同一の積層材から100枚の基板を作っても、配線と織布の関係は1枚ごとにわずかに異なります。ある基板は高速信号のテストを通り、次の基板は落ちる、ということが起こります。
特定の基板についてファイバーウィーブ・スキューを正確に予測できますか。
できません。織布に対する配線の位置がランダムであるため、スキューは固定値ではなく統計的な分布です。ある基板のスキューがちょうどX ps/インチになる、と断言することはできません。できるのは、範囲を解析的に定めるか、選んだ限界を超える確率を計算して歩留まりの推定値として扱うことです。
ガラス織布による最悪値のDk変動はどう見積もりますか。
Simonovichの解析的手法では、二つの極端なガラス織布スタイルを統計的な代理として使います。Dkの下限には粗く樹脂リッチな106スタイル、上限には密でガラスリッチな7628スタイルです。両スタイルの相対3シグマ公差を二乗和平方根で合成し、平均Dk差でスケーリングし、半分にして公差係数とし、各スタイルの平均を中心に対称に適用します。計算例ではDkmin = 3.29、Dkmax = 4.02という範囲が得られ、EDAツール内で差動ペアの両側に割り当てて最悪値のスキューをシミュレーションできます。
DDEとDSEとは何ですか。
Delay Deviation Exceedance(DDE)は、シングルエンド配線の伝搬遅延偏差が指定した限界を超える確率です。Differential Skew Exceedance(DSE)は差動ペアのペア内スキューについての同等の指標です。いずれも、電磁界シミュレーションで配線を織布の1周期ぶん掃引して求めた遅延の相補累積分布関数から導かれます。これらは織布スタイルの選択を、定量化された不良確率に変換します。
ファイバーウィーブ・スキューにとって最も不利なガラス織布スタイルはどれですか。
出典論文で検討された4スタイルのうち、3 ps/インチを限界とした場合に最も不利なのは3313で、この差動スキュー限界を超える確率は77%です。次いで1080が67%、1078が47%となります。限界を明確に満たすのは1035のみで0%です。これらの数値は論文でモデル化された配線形状に固有のもので、配線幅やペア間隔が変われば変動します。
解析による Dk 範囲とシミュレーションによる範囲が一致しないのはなぜですか。
概念としては一致しており、違うのは幅です。二つの織布スタイルを独立な正規確率変数としてモデル化し、100回の試行で各試行20,000サンプルを取ると、シミュレーションによる最小値は算出した下限をわずかに下回り、最大値は上限をわずかに上回ります。解析式は有用な手計算であり続けますが、極値がどこまで届くかという点ではわずかに楽観的です。
参考文献:
Simonovich, Lambert. 2011. 「Practical Fiber Weave Effect Modeling.」White Paper, Issue 2. LAMSIM Enterprises Inc., 1月10日. http://www.lamsimenterprises.com/Practical_Fiber_Weave_Modeling_Iss2_Jan10-11.pdf.
Manukovsky, Alex, Yuriy Shlepnev, Shimon Mordooch. 2023. 「Quantification of Delay and Skew Uncertainty due to Fiber Weave Effect in PCB Interconnects.」2023 IEEE 32nd Conference on Electrical Performance of Electronic Packaging and Systems (EPEPS)(米国カリフォルニア州ミルピタス、10月15〜18日)にて発表。 https://www.simberian.com/AppNotes/FWE_Quantification_EPEPS_2023_final.pdf.





















